気管支喘息とアレルギー性鼻炎の治療薬です。
気管支喘息は、アレルギー反応や細菌・ウィルス感染などが発端となった気管支の炎症が慢性化し、気道過敏性の亢進や可逆性の気道狭窄を起こして発作的に喘鳴や咳などの症状が現れる呼吸器疾患です。
喘息発作時にはこれらの症状が特に激しくなり、喘息死に至る事もあります。
一方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)はさまざまな原因がありますが、主に喫煙により肺に慢性炎症が生じて細胞の破壊や気管支粘膜腺の肥大が起こり、その結果として息切れを生じたり、咳嗽や喀痰が増加する病気です。この病気になると、息が吐きづらくなる「気流制限」と呼ばれる特徴的な症状が起こります。
また、アレルギー性鼻炎はハウスダストなどが原因の通年性と、花粉などが原因の季節性に分類され、鼻の粘膜に炎症を起こし、くしゃみ・鼻水・鼻閉等の症状が出ます。
シングレア5mgの有効成分であるモンテルカストナトリウムは、炎症性疾患に関与するシステイニルロイコトリエン・タイプ1受容体(CysLT1受容体)に選択的に結合し、気管支収縮・血管透過性の亢進・粘液分泌促進を抑制する事でさまざまな気管支喘息やアレルギー性鼻炎の症状を緩和させる働きを持っています。
さらに、モンテルカストナトリウムの抗ロイコトリエン作用の子宮内膜症に対する有効性が最近になって認められつつあります。
子宮内膜症とは本来子宮にしか存在しないはずの子宮内膜細胞と類似した細胞が子宮以外に発現、増殖し、女性ホルモンの影響を受けて炎症や出血を起こす原因不明の疾患で、月経痛や、月経時以外の下腹部痛などの慢性的な疼痛を特徴とし、有病率は閉経前の女性の約10%であるとされています。
最近の研究において子宮内膜症組織に白血球の一種の肥満細胞が集まり、炎症を引き起こすロイコトリエンを放出していることが発見されたため、内膜症組織に存在するロイコトリエン受容体に対するモンテルカストナトリウムの抗ロイコトリエン作用が症状を緩和する作用を発揮すると考えられています。
実際にほかの鎮痛薬が無効だった患者にシングレア10mgを使用したところ、約半数の患者において痛みの軽減がみられたことから、子宮内膜症の新しい治療薬として期待されています。